観林庵写真帖 19 
令和8(2026)年2月4日作成  令和8年3月10日最終更新
 

瀬戸内・笠岡諸島の救急艇
岡山県笠岡市沿岸  令和6(2024)年11月18

 令和6年11月に瀬戸内海の中部に浮かぶ笠岡諸島の北木島でちょっとした行事があって、笠岡市街近くの港から定期船に乗りました。秋晴れのおだやかな気候で、大変心地よい船旅でした。初めて乗る航路なので甲板に出てゆっくりと変化する景色を楽しんでいると、遠くからサイレンの音が聞こえてきました。何事かと目を向けたところ、後方から近づいてくる小型船が鳴らしているようでした。

 小型船はかなり速くてすぐに距離が縮まり、激しく波を立てながら突進してくる姿になりました。それは幹線道路で違反車を追う警察車両を優に上回る迫力でした。不安を感じた私は、警察に追われる立場でないはずと自分に言い聞かせた後、この船に逃亡中の殺人犯でも乗っているのか、あるいは某国の工作員が紛れていることを当局がつかんだのか、などと突飛なことを考えました。もし南西諸島近海で同じような状況になったらC国海警局による不当な拿捕を本気で心配するでしょう。しかし、違いました。小型船は出動中の救急艇でした。後で調べたところ、笠岡地区消防組合が運用する救急艇「みたけ」とわかりました。

 救急艇は私の乗る船をあっという間に追い抜き、白龍の尾のような航跡を残して去って行きました。どこかの島で急病人が出たのかもしれません。笠岡の市内とはいっても普通の船では移動に1時間以上かかる島もあります。一刻も早く患者を笠岡の中心部に運ぶために、高速性能に優れた救急艇が必要なのでしょう。陽光をあびて白い船体を輝かせながら進む姿は、陸の救急車と同様に頼もさを強く感じさせるものでした。旅の記憶の中で、このときの救急艇は大きな存在として今も残っています。

(写真帖19 終わり)

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