10年以上前のことですが、東海道本線の豊橋駅では構内の売店で瓶入り白牛乳を扱っていました。地元の中央製乳(株)が製造しているもので、自社専用のガラス瓶を紙蓋で封止しセロファンをかぶせる昔ながらの方式でした。持ち帰り用に瓶代込みで売ってくれたので、迷わず購入して電車に乗り込みました。豊橋は多くの列車の始発駅となっているため、早めに並べば窓側に座れる可能性が高いのがありがたいです。折良く前向き座席の車両の窓側に座ることができ、窓の縁に牛乳を置いて撮影しました。
この中央製乳の瓶の印刷は、よく見ると全部漢字ですね。瓶底近くに「中央製乳株式会社」とあるのは当然として、中ほどの社紋も「央」の字を囲む二重円の上側部分およそ四分の三は変形した「中」の字であり、残る下側は円弧が三重になっているので当地・三河地方を示す漢数字の「三」ともとれます。円形の紋の下に書かれた「中央」の文字も社紋とともに意匠化されています。
商品に記す商標や社名の表記はラテン文字一択かのごとき空気を感じる昨今、母語基調の秀逸な表記を維持する中央製乳の姿勢を心強く感じました。【日本語を探せ】運動の発掘成果第1号として銘記します。
(写真帖18 終わり)
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