観林庵主人蒙昧録 1-6 
やめてほしいな!おかしな英語もどき「スケルトン」
令和2(2020)年9月1日作成  令和3年6月29日最終更新
 

 電覧網(web)を見ていたら「卵のカラが透ける?スケルトン卵を作ってみよう!」という記事を見つけました。「スケルトン卵」っていったいなんだろう、カラを格子状の外殻で置き換えて中が見えるようにした卵か、などと想像しましたが、違いました。どうもカラを酢で溶かして除去し内膜だけにした卵のことで、中が透けて見えるから「スケルトン」と呼んでいるようです。

 このような命名はちょっと引っかかりますね。スケルトン(skeleton)とは骨組み、骨格、骸骨などのことで、張殻構造体の典型である卵のカラとは対極の存在です。卵のカラに骨など無いですし、そのカラすらも溶かしてしまって中身だけになった卵を「スケルトン卵」と称するのは、本来の意味を多少聞きかじっている者にとって強烈な違和感の攻撃となっています。
 しかも、これは子供向け自由研究の記事なので、小学生に誤用を広めるというとんでもない事態を招いているのです。

 いいかげんに「透ける」「透明」のものを「スケルトン」というのはやめてほしいです。卵の他にも、骨格で強度を保つ構造ではないのに、外表面部分を透明な部材に置き換えただけで「スケルトン」と称している商品がいくつも出回っています。例えば、裏ぶたスケルトンで内部機構が見える腕時計だとか、海中がのぞけるスケルトンカヤックだとか、です。
「スケルトンうちわ」には笑いました。骨組みだけのうちわを連想したからです。そうだったら、船幽霊に渡す底の抜けたひしゃくと同じで全く用をなさないでしょう。実際の商品は骨の無い外枠だけの構造で透明な膜が張ってあるようですが、これも骨なしなのにスケルトンと言っているのです。そうまでして英語っぽいカタカナ語で表示しないと売れないのでしょうか。

 誤用も多勢になれば市民権を得てくるのが恐ろしいところです。すでに一部の辞書ページでは、「内部の構造が透けて見えること」の説明が本来の「骨格」などの意味に続いて掲載されるようになりました。世も末としか言いようがありません。

 さすがに英語の正しい用法を記したサイトでは、"skeleton"に「透明」の意味は無く、別の英語表現に置き換えないと通じないことを丁寧に説明しています。
(例えば、『ネイティブと英語について話したこと』中の「透明、半透明、スケルトンを英語で言うには?」
https://talking-english.net/transparent-skeleton/

 生半可な英語真似で間違った意味が広まるのは、百害あって一利無しです。どうしてもそうした語呂を求めるのなら、透明という意味の「スケルトン」の代わりに「スケトルン」か「スケテルン」は如何でしょうか。馬鹿馬鹿しくて使うのが嫌になることを期待しています。

(蒙昧録1-6 終わり)

  
前へ
[観林庵日記巻頭]
次へ