観林庵主人蒙昧録 1-2 
観林庵の掃除 ・・・ 窓回りを清めて風を迎える
令和元(2019)年9月26日作成  令和3年11月12日最終更新
 

 観林庵の引き渡しを受けたのは昨年(平成30年)秋でした。前の居住者が退去してからしばらく空き部屋だった物件ですので、値段相応に汚れていて、当初はかび臭さが気になりました。まずは可能な限りの掃除をしようと決意しました。

 窓枠や戸枠の木材部分は汚れがひどく、ほこりの塊かカビか判別不能な黒い付着物を、エタノールを染み込ませたぼろ布で念入りにこすり取りました。改修しなかった部屋と廊下は、薄めた塩素系漂白剤を使って壁紙を拭きました。天井や床の他、戸棚の扉、照明器具の覆なども材質に応じて洗剤、エタノール、漂白剤(酸素系、塩素系)を使い分けて、浄化を試みました。
 窓枠のゴムパッキンと、網戸の網部分の汚れも結構臭いの発生源になっているようでした。ゴムパッキンは劣化覚悟でエタノールを使って拭き、網戸の汚れは家庭用洗剤を使って雑巾でぬぐい取りました。
 1ヶ月ばかり週末ごとに掃除に通い、12月の声を聞く頃になって、ようやく芳香剤で誤魔化さずに居られる部屋にまで仕上げることができました。

 居間とともに改修した北側の洋間には、工務店に頼んで壁面に作り付けの書棚を新設してもらってあります。掃除が一段落したところで、蔵書の一部を詰めてみました。素っ気ない棚ですが、好きな本が並んでいるのは良い気分です。ついでに、英国製のトロリーバスの模型を一つ飾ってみました。ここまでやると、自分の庵になったという実感が湧いてきます。
 自庵の体裁に執着するのは仮想世捨て人として不適格かもしれませんが、まだまだ修行が足りない未熟者ゆえ、お見逃しいただきたいと思います。

 空気の入れ換えのために少し開けた窓から、初冬の風が入って来ます。窓回りを清めた効果もあって、冷たいけれど心地よい風です。頃合いまで換気をしたところで、窓を閉めます。
 室内がすっきりしたので、少し前に興福寺で買った香を焚いてみます。邪魔をする臭いが無いと、香の趣きが純粋に楽しめます。
 窓外には西日に照らされた家並みが見えます。入居したばかりなのに、なぜだか既視感のある懐かしさが滲んできます。遙か昔から来ることを運命付けられていた場所に落ち着いたような気分でした。(ウケ狙いの創作ではなくて、本当にそう感じました。)

  

 あれから半年以上経って入居後初めての盛夏も過ごしましたが、さほど冷房を使わずに済んでいます。観林庵は丘陵地の傾斜部分に建っているうえに、南北両面に窓があるので、おかげさまで風の通りが良いのです。目新しい機能やお洒落な装飾はなくとも、風の恵みが実感できることで十分満足です。

(蒙昧録1-2 終わり)
  
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