観林庵写真帖 4 
令和元(2019)年10月16日作成  令和5年4月12日最終更新
 

法界寺前の極細バス通り
京都市伏見区  平成26(2014)年9月14日

 京都市伏見区の法界寺は、日野薬師の別名で知られるように薬師信仰のお寺です。ただ、ご本尊のお薬師さまは秘仏のため、通常は公開されていません。その代わりと言っては何ですが、本堂の横に建つ阿弥陀堂で大変素晴らしい阿弥陀様を拝むことができます。浄土思想が広まった平安時代後期の定朝様阿弥陀如来座像で、国宝に指定されています。

 法界寺はあまり観光化していないためか、私が訪れた日も参拝者はまばらでした。お陰で阿弥陀如来像と心置きなく対話することができました。修行の足りない私は、周りで人がうろちょろすると仏様に集中できないのです。宇治平等院のように観光客だらけでは心が乱されてしまい、名仏師・定朝の傑作といえど、信楽の狸を見ているのと同じくらいの有り難みしか感じられません。

 阿弥陀様を期待以上などと評しては罰が当たりそうですが、法界寺に詣でての正直な気持ちではあります。人的要因を加味したご本尊拝観の総合点は平等院より法界寺の方が上かな、などと独りよがりな感想を抱きながら山門を出て、バス停に向かいました。

 さて、さきほど降りたときバスの進路を余り気に留めなかったのですけれど、あらためて目を向けると法界寺の門前を過ぎたその先は道路が急に狭くなっています。軽自動車同士でもすれ違いに難渋しそうな細道です。白壁が途切れたところでは道が細いまま折れ曲がっている上に、角に瓦屋根がせり出しています。分岐する道はありません。ここに立って、バスが去って行った事実と目に映る景観とを頭の中ですり合わせることが難しく感じられました。停留所標識に書かれた時刻が迫っているのに、バスが来るという確信も持てません。

 整理しきれない半端な気持ちで待っていたら、白壁の角からバスがぬわっと顔を出しました。やはり衝撃的です。これで対面通行なのです。しかも、電柱には「通学路」の文字まで有ります。なんともすごい道路環境ですね。
 こんな道を毎日無事故で走っている京阪バスの運転士さんには敬意を表さずにいられません。

(写真帖4 終わり)
 
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