国鉄バス資料室
606 熊野線・五新線
平成18(2006)年10月9日開設、令和6(2024)年6月2日
 熊野線は紀伊田辺から栗栖川を経由して熊野本宮に至る区間を軸とした路線で、国鉄時代にはこれを熊野本線と称し、他に支線の富里線があった。熊野本線の経路は中世より続く熊野参詣の道の一つで「中辺路」として知られているが、栗栖川−熊野本宮間は世界遺産登録前の平成14年3月末で廃止となった(龍神自動車へ移管)。
 五新線は、和歌山線五条と紀勢本線新宮の間を熊野川沿いに結んでいた路線である。同区間に計画された鉄道路線の先行開業路線という位置づけもあったが、昭和50年代半ばに奈良県内区間への乗り入れを休止した。路線名は廃止まで五新線を名乗っていた。五条−新宮間は国鉄の他、奈良交通と熊野交通も直通バスを運行していたが、国鉄に続き、熊野交通も直通運行から撤退し、以後奈良交通の特急便だけが「五新線」を辿っている。
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五新線本宮大社前駅で委託発売された片道乗車券
(H1.9.2)
 
1.路線概要

◆ 昭和51年2月1日当時の路線(国鉄自動車線普通旅客運賃表S51.2.1全面改正版)

熊野線
(熊野本線)
紀伊田辺−鶴ヶ丘−紀伊新庄−田鶴口−朝来 −鮎川新橋−清姫−滝尻−栗栖川−紀伊中川−湯峰温泉−熊野本宮間(71.8km)
・紀伊田辺−鶴ヶ丘間 (1.3km)
・清姫−西谷間 (2.4km)
・紀伊中川−紀伊小松原間 (7.1km)
(白浜線)
・田鶴口−白浜桟橋−白浜湯崎温泉間 (9.8km)
(富里線)
・鮎川新橋−打越−滝尻間 (30.8km)

五新線
五条−城戸−湯泉地温泉−十津川平瀬−折立−十津川温泉−本宮大社前−熊野本宮−請川−志古−権現前−新宮間 (143.0km)
・請川−川湯温泉−静川間 (7.2km)

下線=鉄道線接続駅

○ 途中下車指定駅・・・湯峰温泉、湯泉地温泉、十津川平瀬、折立、本宮大社前、熊野本宮、志古
◆ 国鉄時代(昭和51年2月)の関係現業機関 :
  紀伊田辺自動車営業所、新宮支所、五条支所 (近畿地方自動車局)
 
2.略史

(準備中)
 
3.関連資料

**線時刻表 198*年*月**日改正 (準備中)
 
4.乗車記等

[1] 『映像の20世紀』の熊野線バス
 NHKが放送した『映像の20世紀・和歌山県』に昭和30年代と思われる熊野線の映像が含まれている。旅客ばかりか郵便や小荷物までも国鉄バスで運んでいた時代の貴重な動画である。
 (1) 熊野大瀬(?) : 「紀伊田辺」の行き先表示を出したボンネットバス
 (2) 近露 :
 ・到着するバス、停車と同時に小荷物を持って降りる車掌
 ・バスを待つ客とその乗車場面
 ・車体側面(乗降扉横)に郵便ポスト

[2] 川本三郎『日本のすみずみ紀行』、新潮文庫(H9)
 「熊野」の章で国鉄バス熊野線に乗車する場面が描かれている。

−−−−−−< 引用 >−−−−−−
 小広峠に向かってひとりで歩いていたら、うしろからバスがやってきてとまった。運転手が「どこに行くんだ?」と窓を開けて聞く。本宮までというと、「今日はもうこれが最後のバスだからこれに乗れ」と親切にいってくれる。この国鉄バスは停留所でなくても古道を歩いている人間が手をあげれば停まってくれるのだという。本宮まで歩いたらどのくらい?聞いたら、「あんた、熊野は広いんだよ。一日あってもたどりつけないよ」と運転手に笑われた。 (pp.88-89)
−−−−−< 引用終わり >−−−−−


 
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