国鉄バス資料室
調査短信 第1号 現存する旧・近江土山駅舎
平成12(2000)年9月27日 第1版公開、平成25(2013)年1月4日 更新(第3版)、
平成28(2016)年4月10日 誤記修正(第4版)、令和3(2021)年4月11日 年号表記等修正(第5版) 

あんみつ坊主


 西日本ジェイアールバス亀草線近江土山駅は滋賀県甲賀郡土山町の国道1号線沿いにある。駅員無配置となった現在(注:第1版公開当時)も駅舎が残っていて待合室として利用され、バスは国鉄時代と同じように一旦構内に進入し駅舎前で客扱いを行う。無人化とともに撤去され消えてゆくバス駅が多い中、よくぞ残ってくれているものと思う。

現・近江土山駅構内に進入する大河原行  H12.9.2
 この近江土山駅、実は「新土山」として昭和30年代に開業した駅である。現在の国道1号線が町中を避けるバイパスとして開通する以前、バスは宿場町を抜ける狭い旧東海道を走っていた。そのため近江土山駅も町中にあった。場所は宿場本陣跡の真ん前で、町の中心の一等地だ。その旧・近江土山駅の建物がバス車庫とともに今も残っているのである。
旧・近江土山駅舎の裏にあった鉄道用地境界標  H15.5.17 
 旧・近江土山駅は昭和7(1932)年3月の省営自動車亀三線開業時に設置されたものと思われ、昭和31(1956)年11月の新国道経由路線開業に伴い開設された現在の近江土山駅との併存時代を経て、旧道経由路線廃止により廃駅となった。廃止年は昭和40(1965)年頃らしい。ただ昭和35(1960)年頃から空き家状態だったというから、しばらくの間は休止扱いだったのかもしれない。
 昭和40年に併設の車庫共々払い下げが行われ、事務所部分は小改造されて鍼灸院となった。現在は鍼灸院をやめているが、ご家族が住居としてそのままお住まいになっている。
 駅舎正面は入居時に改造されたので面影はない。しかし、隣の公民館駐車場から見ると側面はなんとなく駅のように見える。また、奥にはかつて乗務員駐泊所として使用されたらしい鉄道官舎のような別棟があり、さらにその奥の敷地の隅に「工」印の入ったコンクリート製の鉄道用地境界標が残っている。
 隣の車庫部分は国鉄バスらしく古い軌条を使った鉄骨構造である。あまり大きく見えないが、昔はバスも小さかったので3台入ったとのこと(奥に1台、手前に2台)。バス用車庫のため背の高い多目的車の車庫として現在も重宝しているようである。
(注意)
本建造物は民家のため公道からの観察にとどめ、ご迷惑のかからないようくれぐれもご注意ください。

*** 補足 ***
西日本ジェイアールバス亀草線は平成14年9月30日をもって廃止となりました。



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