(1) 貨車の始まり
機関車牽引による最初の公共鉄道は1825年開業の英国Stockton-Darlington間であるが、ここでは主に石炭の輸送を行った。また、この鉄道以前にも馬や定置式蒸気機関を用いた石炭輸送用の鉄道が存在した[101]。さらに遡れば木製軌条を敷設して石炭の運搬を行った時代もある[102]。どの時点を鉄道の起源としても石炭輸送用無蓋貨車が最古の貨車であることは間違いなさそうだ。 |
日本では1872(M5)年の新橋−横浜間鉄道開業時に機関車や客車とともに75両の貨車が英国から輸入されている[103]。この75両は5t積有蓋車と6t積無蓋車であったとされる。公共用の鉄道に限ればこれが日本最初の貨車であるが、産業用のトロッコの類も含めるならば北海道・岩内近くの茅沼炭鉱で1867(慶応3)年に鉄張り木製軌道による炭車の利用が始まったという記録がある[104]。 |
(2) 貨車の区別と記号
鉄道の普及に伴い積載する貨物の種類が増え、それに応じて様々な種類の貨車が製造されてきた。例えば国鉄が陸上輸送の主役だった昭和30年代には有蓋貨車だけでも普通有蓋車の他、冷蔵車、通風車、家畜車、陶器車などが存在し、子供向けの図鑑にも紹介されていた[105]。 鉄道では、これら多種多様な貨車を識別し適切に管理する必要がある。そのため、一般に何らかの法則に則って分類または仕様ごとの区別をし、さらに1両1両番号を付与する。 |
日本の国有鉄道では明治の中頃よりずっとカタカナ記号と算用数字の組み合わせで各貨車を識別してきた。ただし記号体系は2度の大改正と数回の小改正が実施されているので、同じ構造の車両でも時代によって名称、記号が異なる場合がある。国有鉄道の貨車記号の変遷については別頁で主な改正ごとに紹介する。 |
→
明治中期の貨車記号 |
→
明治44年制定の貨車記号 |
→
昭和3年制定の貨車記号 |
→
現行(日本貨物鉄道)の貨車記号 |
(文献) | |
[101] | C.C.Dorman(前田清志訳) 『スティーブンソンと蒸気機関車』,玉川大学出版部(1994),p45. |
[102] | 久保田博 『最新鉄道車両工学』,交友社(1970),p165. |
[103] | 運輸経済研究センター・近代日本輸送史研究会編 『近代日本輸送史』,成山堂書店(1979),p461. |
[104] | 篠田・中尾・早川 「幕末・明治期における茅沼炭山の石炭輸送について」,『土木史研究』No.11(1991.6),p186(pp.183-190). |
[105] | 学習図鑑シリーズ9『交通の図鑑』,小学館(1971),p50. |
← 起点にもどる