5.6 貨車の移動に使われる設備・機械 |
鉄道工場などには機関車や電車を載せる大型の遷車台があるが、ここに示すのは駅の貨物側線に設置された2軸貨車入れ換え用の小型のものである。遷車台の使用により、荷役線(貨物ホームに面する線)での貨車の整理が容易になる。 |
|
貨車用転車台には、機関車用転車台(engine turntable)と同じ一線式の小型のものと、貨車用だけにみられる直角二線式とがある(トロッコなどに類似形態あり)。3本の線路が60度ずつの角度をもって交差する星形転車台も文献に見られるが、日本国内に存在したかどうかは明らかでない【文献562】。 鉄道開業後間もないころの旧・新橋駅および旧・横浜駅では、並行する複数の線路(荷役線・貨車留置線?)にそれぞれ相互に隣接するように転車台を設置してあった【文献563】。これらは隣接線相互の貨車移動に使用したものと推測される。この機能は後に遷車台が担うことになる。 国鉄駅に設置されていた貨車用転車台はすでに全廃されているが、痕跡は若干残っている。特に旧・武豊港駅の転車台は普通鉄道用として唯一残る直角二線式ということで産業遺産として評価されており、武豊町により修復され保存・公開されている【文献564】【文献565】。 |
(左)直角二線式転車台の残骸 愛知県武豊町・武豊港駅跡地 平成11年11月7日 [修復前]
(中左)貨車用転車台の円形坑跡と倉庫前への接続線路 名古屋市・笹島駅跡地 平成12年10月10日 (中右)石材工場敷地内の転車台円形坑跡 岐阜県内 平成14年6月 (右)製材工場トロッコ用直角二線式転車台 三重県内 平成14年6月 |
【563】 奈良一郎「転車台120年の記録(上)」、『東骨技報』No.41(平8)、pp.67-74 【564】 「転車台保存ターン」、中日新聞(夕刊)、平12.10.25 【565】 夏目勝之「武豊港駅貨車用転車台の設置目的に関する一考察」、『産業考古学会2004年度全国大会研究発表講演論文集』(平16.11.14)、pp.25-28 |
車両牽引力は牽引重量1tあたり10kgfとして計算する(平坦線、曲線半径大、状況良好な線路の場合)【文献566】。すなわち牽引能力3tfのキャプスタンは総重量300tの車両を牽引できることになる。 |
|
【566】 松田和三『荷役機械便覧』、産業図書(昭31) |
|
(左)アントANT20型(特徴から推定) 飯田線上片桐 平成8(1996)年3月14日 (右)アントANT20W型 名古屋臨海鉄道汐見町 平成12(2000)年6月10日 |
【568】アント工業(株)『アント20車両移動機』(製品型録) |
貨物設備一覧へ | ||
起点 にもどる |